誘拐事件に関する注意喚起
平成24年6月26日
在ハガッニャ総領事館
1.近年、テロ組織、一般犯罪組織によるものを問わず、外国人を標的とした誘拐事件が数多く発生しています。これまで各国・地域の誘拐事件や誘拐脅威情報については、個別に「スポット情報」、「危険情報」等を発出して注意を呼びかけてきているところですが、特に2011年夏から現在までの1年の間、海外で外国人が誘拐された主な事件としては、次のようなものがあります。
(1)アジア・大洋州地域
ア パキスタンでは、誘拐事件が複数件発生しています。
2011年7月、南東部パンジャブ州デラ・ガジ・カーンから南西部バロチスタン州クエッタに向けて車両で移動していた旅行中のスイス人男女各1人が、バロチスタン州ローレライ地区で誘拐され、2012年3月に解放されました。また、2011年8月、南東部パンジャブ州ラホールで、現地在住の米国人男性1人が自宅から誘拐されました。12月、アル・カーイダが被害者を拘束していることが判明し、2012年5月、アル・カーイダは、拘束中の被害者の映像を公開しました。被害者は未だに解放されていません。更に、2012年1月、パキスタン南西部バロチスタン州の州都クエッタの赤十字国際委員会(ICRC)事務所付近で、ICRCの英国人職員1人が帰宅途中何者かに誘拐され、4月、遺体で発見されました。イ 2012年3月、インド東部オディシャ州(旧オリッサ州)のカンダマル県とガンジャム県の県境で、トレッキング中のイタリア人男性2人がマオイスト(インド共産党マオイスト派)に誘拐され、同月、1人が解放され、4月に残り1人が解放されました。
ウ 2012年5月、フィリピンのマニラ首都圏マカティ市内において、在留米国人のフィリピン国籍の妻及び現地人運転手が武装グループに連れ去られ、同日解放されました。
(2)中東地域
2012年2月から3月にかけて、エジプト・シナイ半島の聖カトリーナ修道院付近の道路上において、米国人、韓国人、ブラジル人観光客が誘拐され、その後解放される事件が続けて発生しました。
(3)アフリカ地域
ア 2011年9月、ケニア南東部ラム県のリゾートホテルに滞在中の英国人夫婦が武装集団に襲撃され、夫は殺害され、夫人は誘拐されました。2012年3月、同夫人はソマリアで解放されました。また、同年10月、フランス人女性が同県の自宅から武装集団に誘拐され、同月、フランス外務省は同人が死亡した旨発表しました。イ 2012年1月、南アフリカのヨハネスブルグで、韓国人親子が国際空港到着後に誘拐・監禁され、2日後、南アフリカ警察当局により無事救出されました。
ウ 2012年1月、エチオピア北部アファール州の観光地付近で、欧州人観光客が武装集団に襲撃され、5人が死亡、複数人が負傷するとともに、ドイツ人2人が誘拐され、3月、解放されました。
エ 2012年1月、ナイジェリア北部カノ市において、建設会社従業員のドイツ人1人が、建設現場から武装集団に誘拐され、5月、殺害されました。
(4)中南米地域
ア 2011年8月、ペルーの首都リマ市内において、現地在住の韓国人高校生が、車で学校に送り届けられる途中、武装グループに拉致され、翌月解放されました。イ 2012年1月、ベネズエラのカラカス首都区において、ベネズエラ駐在のメキシコ大使夫妻が武装集団に誘拐され、翌日に解放されました。ベネズエラでは、2011年以来、外交官が誘拐される事件が連続して発生しています。
2.上記のとおり、アジア・大洋州、中東、アフリカ、中南米の各地域の国々では外国人に対する誘拐について注意が必要です。各地域ごとの誘拐に関する近年の特徴は以下のとおりです。
(1)アジア・大洋州地域
パキスタンの各地において誘拐事件が発生しているほか、フィリピン南部ミンダナオ地域で身代金目的の誘拐事件が頻発しています。大洋州地域では、近年、パプアニューギニアで身代金目的や強姦目的の誘拐事件が発生しています。
(2)中東地域
アフガニスタン、イラク、イエメン、レバノン等において外国人の誘拐等が発生しており、テロ組織又は地元の武装集団による誘拐では人質が殺害されるケースもあります。アフガニスタン、イエメン等においては、国際機関関係者や援助関係者が被害者となる事案も発生しています。
(3)アフリカ地域
エジプト、ナイジェリア、エチオピア、ケニア、ソマリア、アルジェリア、マリ、ニジェール、チャド、南アフリカ等で外国人誘拐事件が発生しています。その多くは身代金目的の誘拐とされますが、ナイジェリア、マリ等では政治目的を伴う誘拐も発生しています。この地域では、一般犯罪組織のみならず、特に広大な砂漠地帯が広がるアフリカ北西地域においては、「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQIM)」等のテロ・グループが誘拐に関与しているとみられ、過去には人質が殺害されるケースもありました。また、ナイジェリア、南アフリカ、ベナン等においては、「419事件」と通称される詐欺事件の一種として、架空の商談等を口実に被害者を現地におびき寄せて誘拐・監禁し、身代金を要求するといった事件も発生しています(「419事件」の詳細については、2008年11月6日付け広域情報「国際的詐欺事件(通称419事件)に対する注意喚起」を参照してください。)。
(4)中南米地域
メキシコ、ハイチ、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、ブラジル等で身代金目的の誘拐事件が多発しており、外国人が被害に遭う事例も報告されています。また、中南米諸国では、被害者を一時的に拘束しATM(現金自動預払機)等で現金を引き出させた上で解放する、いわゆる「短時間誘拐」が多発しています。
3.誘拐事件の形態としては、資産家や企業家等を狙って身代金を獲得しようとする「身代金目的誘拐」、政府等に対して政治的要求を行う「政治目的誘拐」等があります。また、最近では、アフリカ地域を中心に多発している「419事件」(上記2.(3)参照)や中南米諸国等でみられる「短時間誘拐」(上記2.(4)参照)といった形の事件も注目されており、一口に誘拐といってもその形態は幅広く多様です。更に、誘拐の犯行主体も個人や犯罪組織からテロ組織まで多岐に亘ります。
4.各国ごとに注意すべき誘拐事件の種類と傾向は異なります。海外に渡航・滞在される日本人が、誘拐の被害に遭わないようにするためには、当該国において過去に発生した誘拐事件の特徴等を踏まえた安全対策を講じ、最新の政治・社会情勢等に応じて行動する必要があります。また、誘拐事件は、旅行者等を含め誰もが被害に遭う可能性があり、犯行手口も、事前に周到な準備を行って実行されるもののほか、偽の警察官等による偽装検問や、タクシー等を装って犯行に及ぶものなど、様々な形態があることに留意する必要があります。
5.ついては、これまで誘拐事件・誘拐脅威情報に関して各国に発出されている「危険情報」、「スポット情報」等の内容にも留意し、不測の事態に巻き込まれることのないよう、外務省や現地の在外公館等より最新の治安関連情報の入手に努めるとともに、「目立たない」、「行動を予知されない」、「用心を怠らない」の誘拐対策の三原則を心掛け、日頃から安全確保に十分注意してください。また、万一に備え、渡航前には、家族や友人、職場の同僚等に日程や渡航先での連絡先を必ず伝えるようにしてください。併せ、海外での滞在中には、日本の御家族等との間でこまめに連絡を取ることが重要です。
6.誘拐対策の詳細については、外務省海外安全ホームページにおいて、パンフレット「海外旅行のテロ・誘拐対策」、「海外における脅迫・誘拐対策Q&A」を掲載しておりますので、併せて参照してください( http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph.html )。
(問い合わせ先)
○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐に関する問い合わせ)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3679
○外務省領事サービスセンター(海外安全担当)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902
○外務省海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp/
http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp (携帯版)
在ハガッニャ日本国総領事館
電話:646-1290
メール:infocgj@ag.mofa.go.jp